イギリス、EU離脱 Bye, Brits!!

離脱の原因

イギリス(United Kingdom)は、国民投票の結果、EUからの離脱の賛成票が反対票を上回った。離脱賛成leaveが51.9%、残留remainが48.1%という結果。僅差といえば僅差。

この結果を受けて、キャメロン首相は3ヶ月以内に辞任することを表明した。

これは充分ありえることだった。そして事実起きた。なぜだろうか。

まずポピュリズムがいちばん大きなファクターだろう。「イギリスに力を取り戻す」という頻繁に使われた表現がそのことを表している。

イギリスは、通貨はポンドを使いながら、政治的にはEUに入っている。個別の政策はEU委員会や、EU議会で決まってゆく。それはイギリス人にとってみれば望ましくない。
たとえば、移民や難民政策についても、イギリスだけで決定できず、EUの政策に合わせてゆく必要があった。
環境政策や、エネルギー、社会政策など、基本的にEUの枠組みに合致させることが必要なのだ。EUの官僚たちに対しての不満がここから生まれてくる。

EUは経済的には効率がよく、むしろイギリスには有利なのだが、EUに言いなりなのが、自主性や主体性の欠如に見えていた。誰にか? イギリスの中産階級からワーキングクラスにである。

実際、離脱に投票したのはこの階層だ。

よく指摘される、高齢者が離脱を投票し、若年層が残留に投票したという世代間の差もあるだろう。だが、より大きいのは、EUへの不満だ。

離脱によって、GDPは6%低下することが世界銀行から予想されているし、またそのことも知った上での投票なのだろう。数字よりも、そして経済よりも、主体性を取った。

そして、早速、スコットランドが「また国民投票をして、イギリスから離脱する」と表明している。独立した後はEUに加盟して、イギリス政府には従わず、「EUに入る恩恵の方を手にしたい」ということなのだ。EUと直接に関わりたいのだ。

ここから何が起きるか。イギリスからスコットランドと北アイルランドが独立し、現在のイギリス=UKは消滅。イングランドとウェールズだけが地域国家となる。

この「イギリス」の出来事が恐ろしいのは、【次】が控えているからだ。
オランダ、デンマーク、そしてフランス、イタリア、ギリシャ、スペインといった国家が、軒並み「離脱への道」を模索することだろう。
フランスならFrexit、北アイルランドならIrexitという造語がすでに作られている。

この「離脱」の動きは、は極右(フランスの政党「国民戦線」)や、極左(スペインの政党「ポデモス」)であろうがこの点では変わらない。

現状がより展開してゆくと、EUは縮小してゆくだろう。いますぐにではないが、20年後でもない。10年後でもない。

これはナショナリズムなのか?

結論から言うと、イギリスの場合は、ナショナリズムだけではないだろう。スコットランドの例で分かるように、自分たちの地区、地域、ローカルなものに力を取り戻したいのだ。ローカル主義と呼んでよさそうだ。

もちろん、ここに反グローバル化を旗に掲げる人もいるだろうが、それだけではない。また極右を除けばナショナリズム(国家主義)だけでもない。

ヨーロッパ内がより小さい組織になり、そして同時により大きな連合体に所属するという傾向は考えられるだろう。
経済的には、小国であればあるほど弱くなる。効率が悪いのだ。かといって、選択肢は持っておきたいので、EUのような巨大組織には入りたくない。「上からの決定」を回避したい。

「離脱」は新たな都市連合や、国家連合、安全保障上の連合や機構を生む可能性がある。むしろこれは新しい政治形態への可能性だ。

そういう意味では、ここ200年間続いてきた国民国家というシステムの限界が露呈したとも言える。

つまり、国民国家だと国家間で戦争が起きる。戦争防止のために超国家Supranationを作ったら、今日のように離脱が起きた。大きすぎるのだ。

ではまた国家の規模に戻すのか?
それは過去の経験上難しい。もはや民族自決を概念にした「多民族」国、国家の形成は、困難なのだ。

となると、従来型の国民国家、それと超国家、そしてローカル主義、この3つが存在することになる。そこに、都市の連合・連盟や国家連合が、まるで漁網のように多重に張られてゆくというのが今後30年だろう。

また今回、民主制も大きく傷ついた。このことも記しておきたい。イギリスの離脱は「国民投票」で決まったものだ。このような国民参加型の決定方法を採用しようとする地域が増えるだろう。

専門的で難しく、各種の要素を考慮すべきテーマを国民投票で決めていいのか、という疑問が出てくる。だが、「自分たちが関わった」というプロセスの方が重要なのだ。それが現在だ。

ビジネス

日本にも当然影響は大きい。世界経済の大失速は当然だが、日系企業はイギリスに約1,000社進出している。

イギリスをベースにして、そこからEUゾーンへ営業しているというのが通常だ。EU域内は関税はなく、また輸出入のチェックも不要だ。
そしてイギリス市場から、ドイツやフランス、スペインへ出てゆく拠点になっている。工場も多い。日産の工場はあるし、インド財閥のタタ・グループは、ジャガーを所有している。

これらの拠点をイギリスからEU内に動かさなければならない。UKからEUへの高い関税、非関税障壁、それはごめんだ。
では、例えばドイツに動かす? 英語は通じるとはいえ、ドイツ語は必須だ。手続きも煩雑ダ。スイスはあり得るが、そもそもEUではないし、物価が高すぎる。

また進出先の治安も考えなければならない。ヨーロッパはテロによって「戦場化」しつつある。

拠点設定の苦しい選択が必要になる。ヨーロッパから撤退する企業も出てくるだろう。まずはベルリン(地価が安い、英語が通じる)がよいかとは思われるが、日本からの直行便はない。新空港は未だに完成していない。

これは日本企業だけの問題ではなく、韓国、中国、アメリカ、インド企業にも同じことだ。イギリスが金融の入り口、エントランスになっていて、それが閉じてしまい、出口exitになったのが今日Brexitなのだ。

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投稿者:

crow tanaka

国際政治アナリスト(都市政策) 音楽社会学 上智大学非常勤講師

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