世界的な株式の暴落の前に Crashes by nights

暴落の日々を前にして

 

不確実性

経済学者フランク・ナイトのリスクと不確実性の概念は、いまではよく知られています。ナイトが言うリスクとは危険性が確率的に算定できるもの。一方の不確実性は危険性の度合いが確率的に算定できないものを指します。

リスクに対しては、起こる確率がわかるので、世の中は保険を作ることでリスクを経済的に対応できます。生命保険や自動車保険は死亡率や事故率が明確にわかっているので、企業として掛け金を設定できる。

もう一方の不確実性は、どの程度の確率で起きるか、前例がないので保険の設定はできません。たとえば、巨大小惑星が地球と衝突する可能性というのは算定できないでしょう。過去の事例がよくわからないからです。

さて、2015年の8月11日から、上海株やニューヨーク株などが大幅に下落していて、さらにそれが今日、9月1日も続いています。

いま現在、中国政府や人民銀行内部はパニック状態になっていると思われます。熟慮の末に出てきた計画的な政策というよりも、自国通貨を3日連続で切り下げたと思ったら、9月に入って、今度は自国通貨の防衛に向かったりしています。つまり量的な引き締め策!! セオリーとは真逆のことをなぜやるのだろう。対応策が後手に回り、だから効果も限定的になります。

これはマーケットは期待で動くからで、期待通りのことを後から政府がしても「それは当然でしょう」とマーケット参加者は考えます。


投資家の視点と政府、中銀の介入

さて、一方の投資家の視点から見てみます。政府や中国人民銀行が市場に介入すればするほど、株価が下がる傾向にあります。それに対応しようとして、政府は株価を押し上げようとするので、さらに株価は下がるか、通常では想定できないほどの大きな上下の動きをします。投資家は「それほど状況は悪いのか」と判定します。ここに先物やアルゴリズム売買も関わります。こういう<政府と中央銀行の介入が却って逆効果になる状態>は「不確実性」と呼べるでしょう。
異常時ではなく通常であれば、中央銀行の小規模の介入は、投資家を安心させ、不確実性を減少させます。しかし、異常時になると同じ政策的行動が「不確実性」に落ちこんでしまうのです(「不確実性の穴」とでも呼べます)。

この状態で、もし個人投資家が「政府が介入すると株価は下がる」と判断すれば、空売りで儲けようとするか、一度相場から撤退するでしょう。こうなると上海株は、3,000ポイントを大きく切ると予想できます。2,000ポイント付近が2014年夏ごろまで数年続いた上海総合指数の水準でした。そこに1年ほどで向かってゆくでしょう。

では、中国政府や中央銀行はなにもしないほうがいいのかといえば、それはさらなる株価や債券、地価などの下落を生むでしょう。ですから政府や中銀の存在は重要なのです。しかし、政府の介入があるから株価が下がる。どちらの方向も望ましくありません。

中国の株価の下落は個人投資家を直撃し、また民間企業、ひいては国営企業にも悪影響を与えます。共産党の政治的な安定性にも疑問符がつきます。ただしまだ小さなクエスチョンマークですが。

日本株は上海株と相関係数が高くなっているので(日経新聞、2015年9月1日付記事より)、どうしても連れ安するでしょう。指標によれば日本の実体経済はそれほど悪くないのですが、株安、コモディティ安の影響を受けざるをえない。

日銀はなにか政策を打つはずです。一時的にはそれは助けになるでしょうが、このことで不確実性は日本市場でも増します。これが予想されるクラッシュ、株価やコモディティの下落の前の段階で考えられることです。
そしてもし、この予想が実現すると、リーマン・ショックほどではないしにろ、同様な経済的な停滞、不況が訪れてしまいます。

また大きなことが起きたら、そして起きるでしょうから書きます。

参考:ロイター
http://jp.reuters.com/article/2015/09/01/markets-global-reserves-idJPKCN0R12BM20150901

田中公一朗記

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追記:なぜ上海市場がまだ3000ポイント以上の値を保っているのかに関しては、考えたいです。(2015年11月26日)

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投稿者:

crow tanaka

国際政治アナリスト(都市政策) 音楽社会学 上智大学非常勤講師

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