衆議院の強行採決について    LDP’s Gloomy Paradox

政党を選挙で選ぶとき、投票者は「その政党は憲法や常識を守るだろう」と思って投票します。実際には、この予想や信頼はあまりにも当然なので、投票時は無自覚です。つまり選挙民は政党が公約通り、合理的に行動するだろうと期待をしているのです。

かりに、一時的な感情の高まりや、非合理的な発想で、国家の方針の大きな変更が可能だと、国家の道を誤ることがあります。そのときは正しいように見えても、中期的には誤った選択をする。そういう事態を防ぐためにも、条文化された憲法があります。そして条文はそう簡単には変えられないようにしています。

現安倍政権は、憲法自体を変えませんでした。変えられなかったと言っていいでしょう。それでどのような策を取ったのか。
下位法を新しく創設したのです。平和関連法案ですね。この法律が成立すると、憲法はなし崩しになります。自民党がこういう行動にでるだろうと事前に予想して投票行動をした人は少ないでしょう。政党支持率が急落をしたのを見るとそうみなせます。

個別に法律を大量に作成すれば、憲法は「事実上」de facto無効になる。内容上、違憲の法律が立法されると、最高法規であるはずの憲法がその地位から滑り落ちます。極論すると「もはや憲法はいらない」ということにもなりかねません。

裁判所には、違憲立法審査という機能がありますが、これは主に最高裁判所が、個別の争点の中で発動する権利ですから、当分は作られた法律は効力を持ってしまうでしょう。
その間に、超越的な法制度、つまり裁判所の違憲立法審査を無効にする法律の立法も可能だとも言えます。20世紀前半の歴史を思いだすと、政府に全権力が移譲されることになります。

現政権はここまではおそらく考えていないと思いますが、憲法を一部とはいえ空文化したのは、たいへん由々しき自体だと思われます。このことはリベラルのみならず、保守的な人にとっても望ましくないでしょう。社会は不安定になり、書かれた規範=憲法という根拠を失うのですから。鈴木崇弘さんが「超然内閣」とお呼びになるのに、まったく同感です)。
 

ここで、他の政党が憲法の空文化を防ぐことができればいいのですが、そういう政党は日本には見当たりません。自由民主党と公明党の連立政党だけが立法ができる3分の2以上の議席を持っています。自由と民主が、自由民主党によって失われてゆきかねません。imgres

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投稿者:

crow tanaka

国際政治アナリスト(都市政策) 音楽社会学 上智大学非常勤講師

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